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執筆者の写真株式会社あわえ

【特別対談】TURNSプロデューサー 堀口 正裕と語る|地域づくりに本気で関わる共創関係


左)TURNSプロデューサー堀口 様、右)弊社代表吉田

地方創生や地域づくりにおいて無数の手段が錯綜する中、特定の商品や特定の事業者・自治体のためだけではなく、社会にとって役立つ情報を社会提言すべく、政治や教育など様々なお立場の方との対談をお届けします。

初代地方創生担当大臣 衆議院議員の石破 茂 様、明治大学の小田切 徳美教授、一般社団法人シェアリングエコノミー代表理事 石山 アンジュ 様に続き、「これからの地域とのつながりかた」を提供するメディア「TURNS」プロデューサーの堀口 正裕 様との対談です。地方創生の始まる以前から、日本の地方に着目し、地方の魅力と地方に興味のある人々とつなぎ続けてきた堀口 様に、こらからの地域とのつながり方、メディアや中間組織の役割についてお話をお聞きし、これからの取り組みのヒントを見つけたいと思います。


創業・創刊から鑑みる地方の可能性

吉田「まずは、自分たちの創業・創刊から地方に興味を抱いたきっかけを掘り下げたいと思います。TURNSを創刊された背景をお聞かせください。」

堀口 様「TURNSは東日本大震災の翌年2012年6月に創刊しました。TURNSの前身は仕事をリタイアされた方々を対象に、自由で悠々自適な田舎暮らしを提案する雑誌でした。私個人的には、これから日本を背負っていくもっと若い人たちをターゲットにして、彼らが地方と多様なつながりを持つことで、自立や生きる力の形成につながるのではないか、という思いはずっと持っていました。都会で限られた組織やコミュニティでの競争で疲弊していくよりも、仕事だけじゃなくDIYができたり野菜がつくれたり、自分の暮らしを自活できている地方の人々から学ぶことは多いのではないかと。そこで若者と地方が繋がる、それを応援するメディアを創ろうと立ち上がりました。これからの次世代を担う人たちを応援するのだと。もちろん当時は反対されました。なぜ既存の読者を裏切ってまでそんなことをやるのかと。それでも、東日本大震災で多くの日本人の価値観、とりわけ若い世代の価値観が揺らいだのを感じ、これからの日本の為に、今ここでやるしかないと思い、創刊に至りました。」

吉田「タイミングがちょうど私のサテライトオフィス進出とも重なります。私も当時東京でサイファー・テック㈱を経営しており、東日本大震災からの周りの変化を見ていると、これは地方に居場所を求める人が増えるだろうなと思いました。その時採用力強化も見越して、それならば地方にオフィスを出してみようと、サテライトオフィスを徳島県美波町に2012年に開設しました。触発されたものは同じですね。」

堀口 様「震災当日は、東京水道橋のビルにいたのですが、大きな揺れを感じたと思ったら目の前の壁にひびが入り、たたごとではないなと感じましたし、東北に住む私の兄や社員の家族が被災したりと・・・とにかく大変な状況でした。そうした状況の中、小さい会社ながらもメディアを創る立場として日本のために何かできることをしなければと、突き動かされる思いでしたね。」

吉田「私も堀口さんも、よく地方創生の(ための)ベンチャー企業だという見られ方をすると思うのですが、そうじゃない。始まりはあくまでも都市部で感じた違和感と、日本のために何かしなければという思いですね。だからこそ、TURNSさんもあわえもここまで続けてやってこられているのだと思います。その思いがないと、国が言っているから地方創生を始めました!では、続きませんよね。思いがあるから共感してくれる人がいて、応援者が増えて支持されて持続していく。結果、だからこそ関係する人たちの社会変容を促していけるのだと思います。」

堀口 様「大共感です。こういう仕事をしていると、(決してそうではないのですが)よくキラキラの良いところだけ発信して~!とか言われたり、トレンド的な情報発信を依頼されるケースもあるのですけど、それだけでは本当に地域のリアルを知るための情報にはならないし、地域とちゃんと向き合えていない発信になってしまいます。一つの地域を好きになって関わり始めると、自然に他の地域にもリスペクトを持つようになります。それは、その地域で脈々と受け継がれてきた伝統や風習、文化などへのリスペクトが生まれてくるから。なので、地域を支える人たちの苦労や想いをしっかり汲んだ上で、発信しているストーリーとして理解してほしいと思っています。」

吉田「地方創生に関わっていると、東京を否定するわけではないが、地方でも活躍の場はありますし、地方の方がチャンスを得やすいし経済的にも伴うという話をする機会があります。そうするとある面、スモールライフ、ミニマリストのような捉え方をされる時もあって。みんながそんな小さな社会で小さく生きていたら、日本の経済は、国防はどうするの?!と問われることがあります。ありますよね?笑」

堀口 様「あるあるですね!笑。東京が大好きで幸せに暮らしている人もいますし、それを否定はしませんが、やはり1回でも地方との関わりを持つと、個人としても経営者としても、圧倒的に地方の方が得られる自己肯定感は高いと思います。地方の事業者さんを取材する機会が多いのですが、東京でなくとも地方でのビジネスに関わり、そこから世界に出ることもできます。そう考えると、自分のことをより認めてくれて応援してくれる人が多い地方でビジネスをすることは、決して小さくまとまることではなく、むしろ大きな可能性を持ったことだと思うのです。実は、TURNSではシリコンバレーにオフィスを構え、ローカルの事業者が世界にマーケットをつくっていくお手伝いを始めました。むしろビジネスで勝負できる可能性は地方の方があるのではないかと思えるくらいです。」

吉田「同感です。私も地方にいる時の方が、圧倒的に肯定感が高い。東京だけにいる時は、会社として社会に必要とされているという実感がありませんでした。美波町にサテライトオフィスを出して初めて、地域の人に『ITの仕事はよくわからんけど、お前らはうちの村自慢の会社や』と言われて初めて会社として、存在を認めて貰えたようでうれしく感じました。以前は、売上が大きくないから、会社の規模が大きくならないから、社会とのつながりを感じられないのだと思っていました。地方に来てみたら、どんなに小さな会社でも役割がありつとめがあり、応援してくれる。そういう醍醐味を知らない経営者の方が多いので、そのつなぎ役をしたくてあわえを設立したのです。」

地方での気づきと変化

吉田「私がこの町にターンズして気づいたことは、40歳になるまで社会のことなど何もわからずに経営していたということです。例えば税金、政治、国政と地方政治はどのように関係しているかなど。ITの仕事をしていると最先端のことをしていると見られがちなのですが、その当事者が中学校の公民で習うようなことを何もわかっていなかった。そんな大人であり代表であり親だったのですよ。地方に来て、社会のカラクリがわかってくると、視点が増えました。今まで自分には関係ないと思っていたことが、つながっていたり、モノの見方が変わってアセットとして捉えられるようになったり、社会における自分たちの役割がわかるようになって、経営者として覚醒できたと思います。」

堀口 様「面白いですね。むしろ地方に来てからの方が、新しい事業をつくりやすくなったのでは?」

吉田「圧倒的にやりやすい。たしかに大変なことも多いですが、今4社の経営に関わっていますし、経営者としても人としても地方に育てられたなぁと思います。」

堀口 様「今度TURNSでも特集するのですが、移住してでも働きたい企業に着目しています。就学や進学をきっかけに都会に出ていった若者が、野菜の育て方もわからない上司に、数字!数字!と詰められて行き詰まって疲弊しています。笑。しかし、その若者たちのほとんどが、地元でしっかりした理念をもって事業をしている会社の存在を知らない。それを知って実際に転職して移住した人も出てきています。ところが現実は、そうした地域に根を張った素晴らしい会社の存在を知る機会がまだまだ足りません。吉田さんのような経営者と若者の接点の場をどんどん創っていかないといけませんね。」

吉田「地方との接点が自己肯定感につながることで、新たなチャレンジもしやすくなる。そう考えると人口減少の時代にそういった人材を増やして、日本の元気をパワーダウンさせないためにも、接点づくりは重要ですよね。」

堀口 様「本当に社会変化の激しい時代ですが、有事の際にしっかり向き合える人っていうのは私は自立している人だと思っています。地域で根をはって、自分で事業されている方はその強さがあるなと感じます。だからこそ、転職なき移住でもワーケーションでも何でもいいので、地方の事業者の方と接点を持ってほしいですね。大きな会社に所属することも良いけれど、小さくとも自分の経験やスキルを共有して喜んでもらえることが自己肯定感につながり、自立につながっていくことを体感して欲しいです。私たちメディアの役割は、ただ伝えるだけじゃなくて、そこに具体的に気づいてもらうための『場づくり』をしていく必要性を感じています。」

吉田「そこは大変難しい領域だと思うのですが、トレンド誌ではない、そこに価値を感じているTURNSさんだからこそできる領域ですよね。地元の先輩事業者さんに気づかされることはたくさんあります。私が美波町へ戻って来たばかりの頃、地域の方々との飲み会に誘っていただいたのです。その時私は『仕事が終わり次第行きます』と、東京で働いていた時の調子で大幅に遅れて行きました。そしたら地元の方に『自分の時間もコントロールできん安い仕事しよんか?』って言われてはっとしました。その方は軽い感じで言ってくださったのですが、当時の私にはグサッと刺さりました。ITの最先端の仕事をしている社長ってキラキラしているように見えますけど、自分の時間もコントロールできない社長って何なん?地域の人との交流の場という楽しみのために頑張って仕事して稼いでいる面もあるのに、その場にいることを削ってまでする仕事って何なん?時間や友人、その場に宿っているものに対して、お前はどう向き合っているのだ?と問われた気がして。時間を守ることは大事、それは頭では分かっていたけれど、こんな観点での指摘はビジネススクールでもしてくれません。多少言葉がキツくとも、指摘してくれる人の存在とか、言い合える関係性こそ、今の経営者に必要なんじゃないかと思います。」

堀口 様「うちのオフィスは有楽町にありますが、別に私は有楽町の住民に対して何か配慮して事業しているわけじゃないです。けれど、ずっと自分が暮らす地域に根を張り、地域を見守りながら事業をして来た方って、その場に宿るものをすごく大切にしていますよね。地方創生の業界でも色々な人々を見てきましたが、やはりそういう地域に入る時の作法というか姿勢はきちんとあってほしいなぁと思います。地域でプロデューサーやコンサルタントを名乗る人たちも一緒ですよね。」

吉田「自分は優秀だ、アイディアパーソンだという人たちが地方に来てプレゼンしてもかなりの確率で受け入れてもらえないことが多い。そうすると田舎はリテラシーが低いから、排他的だから、スピード感がないから、というダメ出しが始まる。そうじゃない。アイディア云々の前に、あなたの人としての振る舞い、地域や他者への敬意を持っているかという姿勢で判断されているのだとわかっていない。そういう地方の厳しい目の中で成功できれば、逆に言うとどこでも成功できると思うのです。これが地方の価値であり、地方でしか学べない”ならでは”の部分ではないでしょうか。」

堀口 様「いやぁ、いいですね!そういう学びを伝えるメディアを一緒にやりませんか?」

吉田「いいですね、是非!美波町にサテライトラーメン店を出す『藍庵』のオーナーさんは、美波町では生産者さんをはじめ、あらゆる交渉や仕入れの調整などを全部やっています。東京だったら卸に頼んでおけば済むようなことも、全部自分でやらなければいけない。仕入れから売上を上げ続けるためには、人との振る舞いの中で成り立っていくのですよね。それが結果東京の店舗へも圧倒的なサービス力として還元されていきますから、良いことづくしです。」

堀口 様「仕入れから何から全部自分でできるようになるって、人とのつながりの中でしかなれないですよね。人とのつながり方、生命力と私は呼んでいますが、これを学ぶことによって 東京に戻った時に自分でもびっくりするぐらい、商売の仕方やマーケットのつくり方が変わるのではないかと思います。」

吉田「小さなコミュニティは人との距離が近いので、ラーメン屋さんもそうですが商業活動を通じて、どうしたら人は動くのか、喜んでくれるのかを考えて自分の振る舞いを変えていけるようになります。それは人間の本質というか原理原則を理解することであり、地方はそれが学びやすい。地方の価値は、個人を成長させてくれてかつ都市にも還元できることにもあるのではないでしょうか。」


中間組織の役割 地方への光の当て方を変える

TURNS主催のトークイベント

吉田「TURNSさんは雑誌やwebメディアだけではなく、イベントやツアー、最近はECサイトまでやられていますよね。その辺りTURNSとしての役割の変化などが背景にあったのでしょうか。」

堀口 様「今までは、ちょっといい感じに情報発信して終わり、というパターンが多かったのです。笑。私たちは取材を通じてたくさんの熱い人に突き動かされてきたのですが、自分たちも人を突き動かす影響力を持つメディアでありたいと思うようになりました。そこで雑誌やwebで情報発信するだけではなく、一緒に感じに行こう、というコンセプトでいろいろな取り組みを始めました。メディアとして地域に入った時に、人が大きく変わり考え方や行動の変化に影響を与えてくれるのは、人間力・生命力ある事業者さん、経営者の皆さんだと思っています。地域の経営者にフォーカスした企画を通じて、地元の子どもたちが、自分の住む地域にこんなカッコいい大人がいるんだ!と誇りが醸成され良い影響が広がり、結果地域が元気になっていく感じがします。都会にもすごい人はたくさんいますけど、いやいや、うちの地元にもすごい人がいるよ!って各地の子どもたちが言えるようになったら素敵だなぁと。地元の事業者さんの凄さを伝えるために、地域外の人たちとの関わりを創っているような側面がありますね。」

吉田「とても共感します。私たちのようにサテライトオフィス誘致を支援していると、まずは地元事業者を応援すべきではないか?という声が必ず聞こえてきます。地元の事業が大切だからこそ、地域外の人に地元の産業のここが素晴らしい、東京の人にこれカッコいい~!と示してもらうことで、ときに事業者さん自身や地域の人の見方が変わることがあるんですよね。特に子どもたちがそういう機会に出会う場ってなかなかないと思うので、貴重ですよね。」

堀口 様「日本各地にサテライトオフィス誘致を支援しているのも、今までのアプローチや見せ方を変えようという観点もあるのでしょうか。」

吉田「そうですね。今の日本って過去の延長では解けない問題が多いなと思っています。ところが、真面目な人って、100の努力でダメなら、頑張って120にしたりしますよね。同じやり方で。今の地方や日本に求められているのは、量を増やす努力ではなく、やり方を変える努力だと思っています。だからこそ地方には、これまでとは異なる視点や技術を持った異能の関与が必要なんじゃなかろうか、そんな異能との交わりにより、課題の解き方が見えたり、新しい価値が生まれたりするのではないかと思うのです。だから単にIT企業を地方に連れてくるだけじゃだめで、関わった異能が、地域の技術や資源や課題、そしてそれを知る方々との触れあう場が大切なのだと思っています。都会の経営者にとって地方の人は超異能集団ですよ。大工さんでもないのに傷んだ神社をなおしちゃったりしますからね笑。」

堀口 様「そういう人としての凄さに、人は惚れて感銘を受けて学びたいと思って集まってくると思います。先ほどの光の当て方の話にも通じますが、地方の経営者さんにフォーカスして取材すると、一番リアクションがあったのは、その会社の社員さんだったり役場の人だったり地域の人でした。和歌山県の田辺市に、『たなべ未来創造塾』というビジネススクールがあります。講師は地元事業者さんが中心となっていて、受講生のほとんどが担い手不足に悩んでいる事業者さんや二代目三代目の経営者で、受講生の70%が起業・創業しています。TURNSとしてはせっかくそういう座組で地域課題を解決している取組があるのなら、同じような課題に悩む地域に考え方のヒントとしてどんどん発信していきたいと思っています。そういうこともTURNSとしての役割というか責任だと感じています。」

吉田「なるほど。そう考えるとTURNSさんとあわえは競合関係なのかもしれませんね笑。私は地域づくりや地方創生界隈において、優れたノウハウを他所でも再現させる機能や役割が足りないと思っています。たくさんの公金を投じて、全国各地で一点モノづくり、車輪の再発明をしているように感じる時があります。資金は無尽蔵じゃないし、何より人的リソースは減り続けているのだから、皆で同じ発明をしても仕方無いと言うか。こうした広域化や他所での再現性の向上を市町村が担うのは力学的に無理があるでしょうから、本来は国に期待となるのでしょうが、現場からの距離があるのでそれも難しいのかなと。だからこそ、あわえはその役割を担うプロ集団でありたいですし、そういう機能が社会にもっと増えて欲しいと思っているのです。TURNSさんにもさらに活躍して頂きたいですし、共創もしていきたいですね。」


これからの同志へ

堀口 様「私、一番気をつけていることがあって、社員にもよく言うのですが。私たち自身は、はっきり言って地域づくりをやっている人間ではないです。 長いこと地域を見ていると、たまに調子に乗って、『こうすれば地域が良くなる』的なことを言うメンバーが出てきて、そういう時はめっちゃ怒ります。そこには地域への敬意も謙虚さもない。それを言いたいなら、ちゃんと地方創生コンサルタントとして活躍しするか地域に移住して現場に入って汗かきなさいと。無責任な発言は許しません。メディアとしての立場、スタンスを忘れるなという話をいつもしています。」

吉田「当社と共同勉強会しませんか?私たちも、うわぁ、痛いところ突かれているわぁというのもあるかもしれないし笑。この社会やソーシャル・パブリック領域と向き合うことって、相手も生モノであるが故に社会観や歴史観、そして美意識のようなものまで問われますよね。しかし、定義できるようなものでもない。試行錯誤で、手探りで、ミスしたり、社長自らが地元のおっちゃんに怒られたりしながら繰り返して身に着けていくものだと思います。TURNSさんで活躍する方って、どんな特性がありますか?」

堀口 様「ずばり、営業魂がある子です。笑。挨拶ができて、ホスピタリティがあって、思いやりもあって、それでいてガッツがある。TUNRSで活躍しているメンバーみんなに当てはまりますね、営業魂という言葉が。何十年も面接していますけど、『地方創生に関わりたい』『地域づくりに関わりたい』って言う人は、割りとすぐ辞めていきます。それはなぜかというと、私たちはボランティアではなく事業としてやっているからです。先ほど話した通り、人といかにつながれて、そこで得た情報を発信して、その情報の受け手(読者やユーザー、フォロワー、リスナー)の心が動き、具体的なアクションに変わる。その価値をお金に換えていくのが仕事ですが、数字に責任を持ちながら地域と関わるって結構難しい。とにかく地方は0から関係性をつくっていく必要がある。そのためには一見関係のないと思われる人でも、こっちから積極的に接触頻度を増やしていき、つながる努力を不断にし続けないといけません。私たちでいうと、昔ながらの付き合いができるというか、合理性だけじゃなく人とつながりながら本質を追求していくことを面白がる人、そういう仕事の仕方が好きな人ですかね。」

吉田「あわえも一緒ですね。私はよく他者に対する愛という言い方をするのですが、他者に対する興味関心をどれだけ持てるかだと思います。私たちは地域づくりに関わるプロですから、地域にとって役に立つものを新しくつくり続け、そしてこれはこの人にも効くのではないか、こんな症状の人にも効くのではないかと考えて欲しいです。それでお客様が増え続ければ、自分たちの活動もそれだけ長く続けられます。あわえを設立した時にもよく言われましたが、そんなのはボランティアですることであり、株式会社ですることではないと。人間って飽きるし慣れる生き物なので、どんなにボランティアで良いことをやっていったとしても、どこかで慣れてしまう自分や、飽きてしまう自分が出てきます。私自身もそうですし。良いことを続けていくためにも、片方のタイヤで稼ぎながら、それをエンジンにしてもう片方で良いことを継続できる設計にしないと嘘だなと思います。そのためにも営業力は必須ですよね。営業力なんて古くさい!って言われそうですけど笑。」

堀口 様「本当にそう思います。いや、私も営業力と言い続けますよ笑。 財源が政府の風向き次第です、ってそれは事業じゃないなと。政府がその何か事業をやめてしまえば、路頭に迷う人が出てきてしまうようなことがあってはいけないし、それは本末転倒です。私はそういう意味でも、事業者さんを応援していくっていうのは大事なことだと思っています。」

吉田「地域づくりに関わる人向けに、やる気を注入してくれ!とかテンション系の研修依頼もありまして。あわえの本社は古銭湯をリノベーションしたオフィスなので、その辺り熱さやキラキラばかりが注目されることも多々あるのですが、あわえの設立が社会にとってどんな価値をもたらしたかと冷静に考えると、地域に寄り添い続けられるために事業会社として経済性を伴った仕組みをつくったことにあると思っています。」

堀口 様「私も取材で、移住の失敗談を聞かせてくださいってよく言われますが、それって本当にやる意味あるのかなって思ってしまいます。社会にとって何の価値があるのかなって。吉田さんのように、地域の事業者さんの事業の仕組みやロジックにフォーカスしたら面白そうですね。」

吉田「持続可能な社会にし続けるための、パブリック領域で、ノウハウを蓄積し広域展開する役割を担う存在が圧倒的に少ないです。これから、私が死んでもあわえが死んでも、その存在や役割を担う構造は社会に残しておかないといけないという危機感はあります。メディアとしてはその辺りどうですか?」

堀口 様「私たちでいうと、予算とってもらって取材してメディアに掲載して発信して終わり、というのが一番楽ですけど、肝心な取材力の育成や、取材したものを具体的にどう役立てていくかを不断に追求して、それを形にしていく実践力が必要になってきます。突き詰めると人材育成が必要ということです。そして、先述した『たなべ未来創造塾』のような座組を他の地域に会った形で紹介したり、地域づくりに関わる人とをつないだり、そういう座組のつくり方をもっとうまく伝えられるような仕事をしていかないといけないなぁと思いますね。」

吉田「今までのご活躍や今日の対談を通じて、そこを担っていくのがTUNRSさんなのだろうなぁと思いますね。キラキラの楽な仕事じゃないけれど、敢えてちゃんとそこと向き合って、取り組もうとされていくのが堀口さんというかTURNSさんらしいですね。」

堀口 様「ひとつ一つの地域と向き合っていく、手触りのある仕事が好きなのです。今日も話に出ましたけど、地域づくりに関わるには、人との向き合い方とかホスピタリティとか敬意などが重要だと思います。継続していくためにはそういうものを大事にする集団を創っちゃえばおのずと伝播していくのではないかなと思うのですが、そこが一番難しいのかもしれませんし、メディアが担える役割のひとつですかね。」

吉田「いい意味で切磋琢磨してやっていきましょう。あわえだろうがメディアだろうが、現場だろう中間組織だろうが、公務員だろうが政治家だろうが、もう全員でよってたかってやるしかありません。私がこの国で生まれて幸せを感じているように、未来の子どもたちにもそう感じてもらえる社会を残せるように、今バトンを持っている私たちがちゃんとやるって、自惚れでもなんでもなく大人の矜持だと思っています。そこには立場もポジションも年齢も関係ないなと。地方創生・地方創生と騒いでも、世の中あんま変わってないじゃん、ってことは、私もあわえも実力不足だし、TUNRSさんもまだまだこれからですよね。少しずつ個別の変化はあるかもしれないけど、地方が元気になって国が元気になって変わってきているか?って言われると、私たち頑張っているよと言いたくもなるけど、変わってないじゃんって言われたらそれっきりなんでね。」

堀口 様「そうですね。ぜひこれから一緒に変えていきましょう!よろしくお願いいたします。」

吉田「こちらこそよろしくお願いします。本日はありがとうございました。」

堀口様、ありがとうございました。

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